研究概要 |
プロトン伝導性イオン液体の電極界面での電気化学的挙動を明らかにし、優れた"反応場"を得るためのイオン液体の構造を検討することを目的として研究を進めている。 本年度は、プロトン伝導性イオン液体として、HTFSI-EMITFSIを選択し、Pt,Pd,Rh,Au電極上での電気化学的な安定性の評価因子である電位窓の比較を行なうと共に、酸素還元反応(ORR)挙動について評価した。 Pt/EMITFSIは-2.2V〜1.3V vs.Ag/Ag^+の電位領域で安定であったのに対して、プロトン伝導性を付与するためにHTFSIを添加したPt/0.1molkg-1 HTFSI-EMITFSIでは、-0.45 vs.Ag/Ag^+より卑な電位で水素発生電流、1.5V vs.Ag/Ag^+以上でイオン液体の酸化電流を検出し、この間の電位で安定であることが分かった。Pd,Rh及びAu/HTFSI-EMITFSIの電位窓は、それぞれ-0.3V〜1.3V,-0.5V〜1.55V,-0.55V〜1.5V vs.Ag/Ag^+であった。低電位側での反応はPt/HTFSI-EMITFSIと同様に水素発生電位であると考えられ、酸素電極の電位でも本系が十分に安定であることが分かった。 どの電極でも酸素(1atm)中での開路電位は25℃と比較して120℃の方が高かったことから、この値が反応速度に影響を受けていることが分かる。また、120℃での開路電位Pt,Pd,Rh,Auの序列の序列で1V,0.95V,0.85V,及び0.45Vであった。この序列は硫酸水溶液中でのORR触媒活性と同じであった。 硫酸や過塩素酸中での白金電極上での酸素還元反応はターフェル式に従う挙動を示し、高電位側では律速段階が2電子反応、低電位側では1電子反応であるのに対して、25℃では全ての電位領域で律速段階が1電子反応、120℃ではPt及びPdは高電位側では2電子、低電位側では1電子で、水溶液と比較して両者の境界が曖昧な挙動を示した。これに対してRhは全ての領域で2電子反応の挙動を示した。 これらの電極反応に伴う電極表面の吸着物質を評価するためのin-situのIR評価セルを設計・製作し、Pt/硫酸水溶液系で評価を行い、電極電位に応答した水の挙動が観察できたことから、電極表面の評価が可能であることを確認した。
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