燃料電池やセンサーへの応用が期待されているプロトン伝導性イオン液体に注目し、液体および高分子膜との複合膜について、電極反応場としてのイオン液体設計の指針を得ることを目的とし、各種イオン液体の熱安定性、イオン伝導性、貴金属上での酸素還元反応活性、および貴金属上での吸着性について評価した。 Nサイトがプロトン供与体となる2アルキルイミダゾリウム系の様にプロトン自己解離能を有する系と比較して、非プロトン解離性のイオン液体は伝導度の観点からは差異を認められなかったが、プロトン自己解離能を有するイオン液体の方が酸素還元反応の媒体としては優れた性質を示した。また、プロトン自己解離能を有する2-エチルイミダゾリウムトリフレートの場合、ブロンステッド酸であるトリフルオロメタンスルホン酸を加えた方が酸素還元の媒体として優れた性質を示したのに対して、ジエチルメチルアミントリフレートは中性組成でも酸素還元媒体として優れた性質を示した。しかし、トリフルオロメタンスルホン酸を加えても明確な差異を示さなかったことから、イオン液体自体の酸性度の影響が大きく、酸素還元反応には酸性のイオン液体が適すると考えられる。 アニオンとしてはイミド酸であるビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドよりもオキソ酸であるトリフルオロメタンスルホン酸の方が酸素還元反応媒体として優れた性質を示した。In-situ IR測定よりビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドはPtに吸着し易い挙動がみられ、被毒種のような挙動が認められた。 これらのイオン液体を膜として使用する場合、パーフルオロエチレンスルホン酸内に含浸させるとイオン液体単独よりも安定性が高くなったが、イオン伝導性の低下も大きかった。適度に極性を持ち、イオン液体と親和力が高く、化学的に安定なN-フェニルマレイミド-スチレン/ジビニルベンゼン交互重合体をマトリックスとした膜はイオン液体の性質を反映したプロトン伝導体として機能することがわかった。
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