研究概要 |
n型半導体であるTiO_2表面に金ナノ粒子を担持したサンプル(Au/TiO_2)を調製し、単体硫黄(S_8)の吸着特性を調べた。その結果、S_8はAu/TiO_2のAu表面に高選択的に吸着することを明らかにし、吸着等温線の解析から、飽和吸着量と吸着平衡定数を決定した。イオンクロマトグラフィーを用いて、光照射にともなって脱離した硫黄を定量した。硫黄の光脱離とダークにおける再吸着を仮定した反応モデルに基づいて得られた理論曲線は実験データに良く一致することが明らかになった。この解析から、硫黄の光脱離速度定数と再吸着速度定数を同時に求めることに成功した。ゾルゲル法を用いてSnO_2電極上にTiO_2薄膜を形成し、析出沈殿法によりさらにその表面にAuナノ粒子を担持したサンプルを作製した(Au/TiO_2/SnO_2)。本研究補助金で購入した電気化学測定システムを用いて、Au/TiO_2/SnO_2のダークおよび光照射下における電極電位を測定した。その値から見積もった光定常状態における半導体のフェルミエネルギーと脱離速度との間に良い相関があることを見出した。ガラス基板上にゾルゲルTiO_2薄膜(アナタース,膜厚=65±5nm)を形成し、析出沈殿法を用いて、この表面にAuナノ粒子を高分散状態で担持した(Au/TiO_2-TF)。S_8分子を飽和吸着させたAu/TiO_2-TFのX-線光電子分光スペクトルは、Auナノ粒子表面に選択的に吸着された硫黄が、原子状(S^<δ->-Au^<δ+>)および分子状(S_8)の2つの吸着様式を取ることを示した(S-Au/TiO_2-TF)。25℃の水中において、S-Au/TiO_2-TFに光照射したところ、Au粒子サイズは殆ど変化することなしに、その表面からの素早い硫黄脱離が進行した。速度論解析の結果、TiO_2薄膜担体系における脱離速度定数は、TiO_2微粒子担体系の値に比べて、約3.6倍大きいこと、また、後者の閉鎖系では、硫黄脱離率が40-70%の範囲で飽和するのに対して、前者の解放系では、硫黄脱離が完結することを実証した。
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