レピドクロサイト型構造を持つ一連の層状チタン酸塩を、リチウム二次電池の正極材料へ応用する研究を進めている。これら層状チタン酸塩は、現在リチウムイオン電池の正極として広く使われているコバルト酸リチウムと同様、インターカレーション電池の正極に用いることが可能であると考えられる。本年度は、層内のチタンサイトの一部を、マグネシウムイオンで置き換えた構造をもつCs_xTi_<2-x/2>Mg_<x/2>O_4(x=0.70)について調べた。この化合物の合成には、炭酸セシウム、アナターゼ型二酸化チタンおよび酸化マグネシウムを用いた。所定比の混合物を、800℃で20時間、2回加熱した。次いでこの化合物の層間のセシウムイオンをリチウムでイオン交換した。試料を1M LiNO_3中に分散し、60℃で3日間反応させた。リチウムイオン交換生成物のXRD図は単一相として指数付けすることができた。セシウム、リチウムおよびマグネシウムは原子吸光分析により定量した。チタンはクペロンを用いる重量法により定量した。イオン交換反応により取り込まれた層間水の量はTG-DTA測定により求めた。層間のセシウムイオンは83%が溶出し、73%がリチウムとイオン交換したことがわかった。このリチウムイオン交換生成物を真空中180℃で加熱すると、層間水は取り除かれ、層間距離が0.86nmから、0.66nmに小さくなった。この層間水を取り除いた試料をリチウム二次電池の正極として、充放電特性を調べた。初回のサイクルでは、1.5-4.2V間で、120mAh/g程度の充放電容量を示した。20サイクル後も容量は75%程度を保つことがわかった。本試料はインターカレーション電池の正極として優れた特性をもつことが明らかとなった。また、試料中の重金属はチタンのみであるため、環境調和型正極材料としても有用であると考えられる。
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