層状の結晶構造をもつチタン酸塩を、リチウムニ次電池の正極材料へ応用する研究を進めている。層状チタン酸塩は、現在リチウムイオン電池の正極として広く使われているコバルト酸リチウムと同様、インターカレーション電池の正極として、応用可能であると考えられる。本年度は、層内のチタンサイトの半数を、ニオブ(V)イオンで置き換えた構造をもつCsTiNbO_5について調べた。合成は、炭酸セシウム、アナターゼ型二酸化チタンおよび酸化ニオブ(V)を用いた。所定比の混合物を、800℃で20時間、2回加熱した。次いでこの化合物の層間のセシウムイオンをリチウムでイオン交換した。試料を1.OM LiNO_3中に分散し、60℃で9日間反応させた。イオン交換生成物のXRD図は単一相として指数付けすることができた。セシウムおよびリチウムは原子吸光分析により定量した。チタンおよびニオブは重量法により定量した。イオン交換反応により取り込まれた層間水の量はTG-DTA測定により求めた。層間のセシウムイオンは90%が溶出し、60%がリチウムイオンに、30%が水素イオンに交換された。イオン交換生成物を180℃で1時間加熱すると、層間水は取り除かれた。この層間水を取り除いた試料をリチウムニ次電池の正極として、充放電特性を調べた。電流密度は0.10mA/cm^2とし、1.0-4.5V間で放電後、充電を行った。放電容量はおおよそ200mAh/gであった。これは、組成式あたり1.8のリチウムイオンがインターカレーションすることに相当する。充電容量は160mAh/gであり、組成式あたり1.5のリチウムイオンがデインターカレーションすることに相当する。本研究で合成した試料は、インターカレーション電池の正極として極めて大きな充放電容量をもっことが明らかとなった。また、試料中の金属はチタンとニオブのみであるため、これまで検討してきたレピドクサイト型層状チタン酸と同様に、環境調和型正極材料としても有用であると考えられる。
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