1.層状の結晶構造をもつチタン酸塩は、イオン交換体やインターカレーションのホストとして古くから研究されてきた物質である。我々は先に、レピドクロサイト型の層状構造をもつチタン酸塩Cs_xTi_<2-x/4>O_4がインターカレーション電池の正極材料として応用可能であることを明らかにした。層状構造をもつチタン酸塩は、優れた正極材料となりうるポテンシャルを持つものと考えられる。本研究では、層状構造をもつ種々のチタン酸塩の合成を行い、イオン交換反応を用いて、層間にリチウムがインターカレーションできるスペースを作った。この層間へのリチウムのインターカレーション・デインターカレーションを電気化学的に行い、層状チタン酸塩のリチウム二次電池正極への応用の可能性について検討した。 2.本研究では、物質探索の結果、層状チタン酸塩として、Cs_xTi_<2-x/2>Mg_<x/2>O_4、K_xTi_<2-x>Fe_xO_4、CsTiNbO_5およびCsTi_2NbO_7を取り上げた。これらの化合物の層間に存在するセシウムイオンとカリウムイオンは、層間のスペースのほとんどを占有しているため、これに直接リチウムをインターカレーションすることは不可能である。このため、層間のアルカリ金属イオンをリチウムイオンや水素イオンとイオン交換することを試みた。いずれの場合も水溶液中の反応により容易にイオン交換反応が進行することがわかった。なお、このイオン交換と同時に、層間には水分子が存在するようになったが、これは加熱により取り除くことができた。インターカレーション電池を組み、充放電特性を調べたところ、リチウムイオン交換生成物や水素イオン交換生成物は、正極材料として有用であることが明らかとなった。これらの正極材料は環境に優しいという性質ももつ。以上のことから、本研究の当初の目的はほぼ達成されたものと考えられる。
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