従来の常識を破った高強度ヒドロゲルとして注目を浴びている、特異的な有機(ポリマー)/無機(クレイ)ネットワーク構造を有するナノコンポジット型ヒドロゲル(NCゲル)を合成し、in-situ重合過程でのネットワーク形成機構、広範囲な力学物性の制御、ゲルの力学変形機構、温度応答性の制御、光学物性(透明性、光学異方性)解析、及び新たな機能性(多孔質体形成、相転移応力、表面滑り特性、生体適合性)の発現について研究し、以下の成果を得た。(1)NCゲルのネットワーク形成機構を、光透過率、振動粘度、XRD、延伸試験などにより解明した。(2)クレイ濃度(C_<clay>)変化により、含水率80〜90%において、高破断伸び(1000%)を維持したままで広範囲な強度、弾性率の制御を行え、延伸破壊エネルギーを同組成の有機架橋ゲルの3000倍以上とすることができた。また、延伸における永久歪量の時間依存性や変形メカニズムを力学緩和試験や中性子小角散乱測定により明らかにした。(3)ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)鎖のコイルーグロビュール転移に起因する応力の検出、およびクレイによる該転移の制御(抑制、消失)に成功した。(4)NCゲルの透明性はクレイ濃度によらず、一方、光学異方性は臨界クレイ濃度(=NC10)以上で発現することを見出した。(5)NCゲル表面の滑り摩擦挙動が、外部環境(湿潤、乾燥)、荷重、ゲル組成によって変化することを解明し、NCゲルの表面構造モデルを提唱した。(6)NCゲルの凍結乾燥により、特異的な三層構造を有する多孔質体が形成することを見いだした。(7)NCゲルの医療材料に向けた評価研究で、生理食塩水や血漿の高吸収性、コートによる乾燥制御、抗血栓性発現、オートクレープ滅菌処理可能性などを明らかにした。
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