si基板上に形成される弗化物系共鳴トンネルダイオード(RTD)はsiデバイスと集積可能な量子効果デバイス実現に高い可能性を持つが、ヘテロ成長層の品質が充分でないため、デバイス動作が不安定とう根本問題がある。本研究では、ヘテロ層の各層を混晶化して構造全体を格子整合することによって高性能を実現することを目的とした。ここで対象とするヘテロ構造は、バリア層(CaF_2)/井戸層(CdF_2)/バリア層(CaF_2)/基板(si)というsi基板上に三層の成長層が基本である。 まず、第一層目の従来のCaF_2層に、新たにCa_xMg_<1-x>F_2層(x=0.1-0.2が整合組成と推定)を導入することを検討し、混晶としてのエピタキシャル成長性を確認し、成長時の結晶構造と結晶方位を明らかにした。そして、格子整合の組成において、従来のCaF_2層で問題であったピンホール欠陥が抑制できること、その結果、この層を用いたRTDで従来より高いピーク/バレー電流比など優れた素子特性が得られることを明らかにした。 続いて、第二層目の従来はCdF_2を用いていた井戸層に、新たにSr_xCd_<1-x>F_2層を導入することを検討した。こちらも混晶としてのエピタキシャル成長性、格子定数の制御性を確認し、この混晶層を用いた素子動作まで確認できた。格子整合をとったSr_xCd_<1-x>F_2(x=0.2-0.3が整合組成)層がエネルギーバンド構造(伝導帯端のエネルギーレベルが充分低い)も含めて、量子井戸層に利用できることが明らかになった。井戸層の格子整合が素子特性に与える効果を明確にするのは今後の課題である。
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