1.研究目的 熱機関エンジンなどの人工動力システムは、加工・制御技術の発展に伴い、高出力・高効率・精密小型化を実現している。しかしながら、これらの多くは柔軟性・自由度・自律応答機能性に欠けているという欠点がある。 本研究課題では、ソフトな高分子液晶ゲルを用いて、異方的な形体変化による収縮・回復運動(人工筋肉)を実現する。本研究では、従来の温度制御(相転移)による異方的収縮・回復メカニズムではなく、比較的に制御し易い電気力によるネマティック液晶ゲルの異方性そのものを制御する。その際の液晶ゲル(人工筋肉)の収縮率、応答速度を定量的に研究する。 2.研究実績 偏光顕微鏡下で、電界における透過率の変化(液晶ゲル内の棒状分子の配向変化)をはじめ、液晶配向の初期条件(温度によって決まる)における液晶ゲルの電界応答変位の大きさ、応答速度及び振動の特徴などを調べた。この時、電極上の液晶の初期配向も重要となるので、Homeotropic配向(棒状の液晶分子が電極面と垂直)及びPlanar配向(棒状の液晶分子が電極面と平行)の両方を用いた。さらに、Mono及びPoly型の両エラストマーを用いて研究を行い、その相違点を調べた。 液晶ゲルの究明のために、以下を系統的に測定した。 ・電界における液晶ゲルの透過率変化の側定(1次元・2次元画像の時間連続側定) ・電界における液晶ゲルの最大変位値の測定とその温度依存性 ・液晶ゲル変位の電界閾値の温度依存性 ・電界ON-OFFにおける液晶ゲルの応答速度の電界強度及び温度依存性 ・液晶ゲルの振動における印加電界の周波数及び波形依存性 以上の研究から、ネマティック液晶ゲルにおける電気応答性・温度依存性を明らかにした。また、Mono及びPoly型の両エラストマーの相違点も明らかにした。
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