研究概要 |
ZnSe-ZnTe超格子はtype IIのバンド構造を持ち、その発光波長はZnTe層の厚さに大きく依存する。1つの超格子中に2種類の厚さの異なるZnTe層を持たせると同一の試料が2つの発光ピークを示す。これを二重サブバンド(Dual Sub-Band : DSB)構造と呼ぶ。ZnSe-ZnTe DSB超格子は、長波長の光を短波長の光に変換する波長変換効果を有する。 平成17年度は構造の異なる5つのZnSe-ZnTe DSB超格子[(4,4)_<12>,(4,11)_3]_<30>/InP、[(6,1)_6,(6,4)_2]_<30>/GaAs、[(8,2)_4,(8,4)_2]_<30>/GaAs、[(11,1)_7,(11,4)_1]_<55>/ZnSe、[(7,2)_6,(2,5)_1]_<100>/GaAsにおける励起光強度依存性について比較検討を行った。励起光源としてAr^+レーザー(488nm,2.54eV)、およびHe-Neレーザー(633nm,1.96eV)を用いた。励起光強度はNDフィルターで制御した。 Ar^+レーザー光励起下の全ての試料で、He-Neレーザー光のエネルギー位置を挟んで2つの発光ピークが観測された。He-Neレーザー光励起下で励起光よりも高いエネルギー位置に発光ピークが観測され、波長変換効果が確認された。発光強度(I_<em>)の励起光強度(I_<ex>)依存性、I_<em>〜I_<ex>^n、の測定結果より、いずれの試料の波長変換光もnの値は1より大きく、さらに構造とn値の相関から波長変換効果の遷移過程がV.B.のZnSe層をトンネルする過程を含む、2段階吸収による発光であることが明らかとなった。type II超格子の発光ピークエネルギー-励起光強度依存性において、そのピークエネルギーは励起光強度の増加に伴うブルーシフトを示す。全ての試料のPLピーク(波長変換光を含む)が励起光強度の増加に伴うブルーシフトが見られることから、波長変換光は高エネルギー励起のH levelピークと同一のtype IIのレベルからの発光であることが判明した。 波長変換光はV.B.のZnSe層をトンネルする過程を含む2段階吸収による発光であり、その発光レベルは直接励起のH levelピークと同一のtype IIのレベルからの発光であることが明らかになった。
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