研究課題
基盤研究(C)
当該補助金によるこれまでの研究から水素中でのレーザーアブレーションによるナノ結晶生成過程と水素化過程の全貌が明らかになってきた。水素ガス圧を変化させてもナノ結晶の一次粒径はほぼ一定であり変化するのは二次構造である。この構造からナノ結晶の生成過程を考察すると水素ガス圧はプルームの大きさをコントロールするパラメーターとして作用しプルームの大きさと基板位置の関係が本質であることが明らかになった。プルームが基板位置よりも十分に小さい場合にはプルーム内部で生成したナノ結晶同士が衝突しクラスターを形成する。そしてさらにクラスター同士がクラスター・クラスター凝集を始める。この形成された凝集構造は繊維状の形態を示しこれが基板に到達する。プルームが大きくなるとナノ結晶が基板上で堆積し基板上に柱状の凝集構造を形成する。得られた試料の一次構造は水素化シリコンのナノ結晶ではなく水素で表面が覆われたナノ結晶である。これは水素とシリコンの結合が高温では安定ではないことが原因であることがプルームの分光を行なうことによって明らかになった。この表面水素の二次構造に与える影響に関して調べるためにバックグラウンドガスに水素とヘリウムの混合ガスを用いて水素分圧を変化させた。その結果、表面の水素は表面構造の安定化に寄与し、表面水素の多い試料は凝集度が低くなる傾向があることが明らかになった。これらの結果はパルスレーザーアブレーション法によって凝集構造を広範囲に変化しうることを示す。凝集構造は凝集度が高ければナノ結晶間の波動関数の重なりが無視できなくなり光学吸収単に影響をもたらすことが予想される。事実、本研究では凝集度と光学吸収端の相関の実験的事実をつかむに至った。上記のように表面水素化は表面構造の安定性を通して光物性に大きく影響することを明らかにしたのが当該助成金による主要な結果である。
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