研究概要 |
本研究において、転移温度Tc以上における超伝導揺らぎ伝導(σ')に関し、短波長揺らぎ(SWF)の観点から理論的・実験的な検証を行った。 1.理論的側面:σ'についての既存の理論を高温超伝導体の特徴に合わせて拡張した式を導いた。(1-1)Aslamazov-Larkin(AL)項、異常Maki-Thompson(MT)項、及び定常MT項と状態密度項を含む3^<rd>項における面内σ'の式をSWF領域に拡張した。(2-2)同様な研究は各項のc軸σ'についても行った。(1-3)2〜3次元や2band効果もSWF領域において考慮された。 2.実験的側面:得られた表式は次の系における実験の解析に用いられた。(2-1)不純物を含むYBa_2Cu_3O_<7-y>(YBCO)薄膜と多結晶体。(2-2)LaBaCaCu_3O_<7-δ>(LBCCO)多結晶体。(2-3)(Bi,Pb)_2Sr_2Ca_2Cu_3O_y.多結晶体。(2-4)Bi_2Sr_2(Ca_<1-x>Y_x)Cu_2O_<8-δ>単結晶。これらの系におけるσ'解析には理論式(1-1)が用いられ、実験dataとの優れた一致が見られた。その事により、伝導次元・揺らぎの振幅(C_F)・異方性parameter(r)・cutoff-parameter(α)・散乱時間(τ)・相coherence時間(τ_φ)・対破壊parameter(δ)が評価された。 3.解析結果:上記のparameterの内、r,α,τ_Φが試料の品質という観点から各系を特徴づける共通な因子であることが判明した。理論(1-2,1-3)は他の実験結果の解析に適用された。殆どの理論解析は実験結果を良く記述し、それにより各超伝導系を特徴づけるparameter(面内・c軸coherence長、band間結合定数等)を算出できることを示した。多くの解析はMT項の必要性を支持し、従って全ての超伝導機構が必ずしもd波対称性ではないことを示唆する。結論として、σ'に対する本研究手法は、超伝導特性の重要な知見を与え、超伝導の新しいspectroscopy研究としての機能を有すると強調する。
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