本研究では、ネマティック液晶を用いた双安定表示素子のモードの1つであるZBD(Zenithal Bistable Display)モードを実現するための基礎研究について、最終年度としての研究を計画に従って遂行した。 昨年度確立した、レーザー光干渉露光を用いた光誘起レリーフグレーティング(LRG)作製手法により、双安定配向界面を作成し、ZBD液晶セルをさまざまな条件で多数作製した。LRGの溝の深さ及びピッチを変えることによって、界面アンカリングエネルギーを連続的に変化させることが出来るため、発現するZBDセルにおける双安定性の違いを実験の上から検証出来た。 実験と同時に、有限要素法による液晶配向シミュレーションを行い、ZBDセルの最適作製条件を探るため、デバイスパラメーターを振ることによって、実験する際の具体的な条件を明らかにした。 次に、垂直配向のアンカリングエネルギー評価技術の確立に取り組んだ。エリプソメトリー法を用いた新規な垂直アンカリング測定手法を構築して、垂直配向膜を用いたホメオトロピック配向セルを使い、極角アンカリングエネルギーの測定を行った。また、ZBDモードの対向側一様配向は水平配向でも可なため、水平配向の方位角アンカリング測定技法の改良も行った。また、実用化に当たって、用いる液晶の相転移の違い(界面相転移/バルク相転移)が、アンカリングエネルギーに及ぼす影響について知見を得ておく必要性があることから、ラビング処理と残留リタデーションがアンカリングエネルギーに及ぼす影響を詳細に調べた。 ZBDモードの研究に取り組む中で、表面幾何形状を用いずに、水平配向と垂直配向の周期的な構成による双安定モードを新規に見出し、素子の作製に成功した。
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