研究概要 |
ビスマス層状構造強誘電体Bi_4Ti_3O_<12>(BIT)は、a軸方向ではP_r=50μC/cm^2,E_c=50kV/cm、c軸方向ではP_r=4μC/cm^2,E_c=4kV/cmの強誘電特性を有することから、不揮発性メモリー材料として期待されている。また、(Bi_2O_2)層に導入された低次元性が分極反転に伴うストレスを緩和するため、Pt被覆基板上で耐疲労特性に優れている。しかし、BIT薄膜とPt被覆基板との間には、物質拡散が生じるため、良好な強誘電性は実現できない。本研究では、成膜法として、有機金属化学蒸着法を採用し、BIT薄膜とPt被覆基板との間に、酸化チタンアナターゼを導入することで、物質拡散を阻止し、良好な強誘電性を得ることを目的とする。 最初に、Ti(i-oC_3H_7)_4を用いてPt基板上に、酸化チタンアナターゼ薄膜を形成した。基板温度が400℃以上で酸化チタンのルチル相とアナターゼ相が混在し、単相のアナターゼ薄膜は得られない。基板温度350℃において、ルチル相は消え、アナターゼ単相の膜が得られた。この膜は、表面の平坦性に優れ、小さな流径から形成されるエピタキシャルなものであることが確認できた。 次に、Bi(CH_3)_3とTi(i-oC_3H_7)_4を原料として用い、アナターゼ薄膜上にBIT薄膜を形成した。Pt基板上に直接形成した場合よりも、Tiの組成はやや過剰になっていた。これは、アナターゼのTiがBIT薄膜形成時の初期核的役割を果たしていることを示唆している。アナターゼ薄膜上に形成したBIT薄膜は、a,b軸への配向性を示し、表面は小さな流径から形成され、Pt基板との界面も良好であった。そのとき、BIT薄膜は、P_r=30μC/cm^2,E_c=150kV/cmの強誘電性を示し、かつ、Pt基板上に直接形成した場合よりもリーク電流の影響が低く抑えられることが確認できた。
|