光誘起シンクロナイズド現象とは、アゾベンゼンポリマーをはじめとする有機高分子薄膜の表面に1μmより細かい周期で数100nmにもなる深さの凹凸構造(表面レリーフ)がmW程度の可視極微弱光を照射するだけで形成できることを言う。光だけでレリーフの記録、多重記録、消去、定着が自在に制御できる有機高分子の極めてユニークなシンクロナイズド現象である。この現象のメカニズムは、アゾベンゼンポリマー同士が光抗力を介して互いに相互作用しながら光異性化反応を自己組織化(シンクロナイズ)していくものと考えられているが、詳細は解明されていない。 本研究の目的は、微弱な光刺激を受けて有機高分子材料自身が起すシンクロナイズド現象を多次元に活用してオンデマンドなフォトニックレーザーを生み出す、いわば最先端化学工学と光学新領域を高度に融合した全く新しいコンセプトのデバイス創製である。 平成17年度には、Arレーザー(488nm)、Nd : YAGレーザー(532nm)を光源としてアゾベンゼンポリマーへのDFB格子書き込み条件の最適化をはかった。その結果、記録光源には488nmのArレーザーがより適していること、3次以上のDFB格子では高調波成分がほとんど現れないため、DFBレーザーの発振閾値が高くなりすぎることが実験的に解明できた。平成18年度は17年度に求めたDFB格子の最適記録条件を用いて導波路DFBレーザーの発振実験を行った。レーザー層としてDCM色素ドープPVKをオーバコートした二層膜素子を使用した。ピコ秒Nd : YAGレーザーを励起源とした場合、発振閾値は20μJ/cm^2であった。結合モード解析から発振閾値の妥当性について理論的に解析を行い、実験との良い整合を得た。素子寿命の改善が今後の課題である。
|