半導体レーザ(Laser Diode ; LD)励起薄片固体レーザでの散逸パターン形成および自己混合レーザ計測の研究を遂行し以下の成果が得られた。 1.散逸パターン形成と非線形ダイナミクス (1)0.3mm厚の端面鏡付きNd:GdVO_4薄片固体レーザを対物レンズによりLD端面励起し、励起パワーの増加による不規則横モード→TEM_<00>モードへの遷移と、不規則横モード発振に付随して発現する高速変調ならびにカオス振動を観測した。高フィネス薄片ファブリ・ペロー光共振器では、通常の光学研磨であるλ/10(λ:波長)程度の端面平面度においても、ランダムな光散乱と干渉により複数の「局在モード」での発振が起こり、これらの局在モード間のビートによる強度変調が発現することを理論・実験的に示した。励起パワーの増加により熱レンズ効果が支配的になり局在モードがTEM_<00>モードへ遷移することを併せて検証した。 (2)日本で開発されLD励起固体レーザとして注目されているNd : YAGセラミックレーザにおいて、単結晶グレイン境界の発振パターン形成への影響を様々なNd濃度のLD励起端面鏡レーザ構成(厚さ1mm)で追求した。網の目状に存在する晶壁による、発振横モードの複数の「局在モード」への分離と局在モード間のビートによる複雑・多様な強度変調波形、準周期・カオス振動を観測した。また、晶壁に取り込まれたと推察される欠陥によるQスッチ的周期パルセーションを発見した。これらの現象は、導出した結合局在モードレーザのモデルにより理論的に検証された。(1)、(2)とも新規の散逸パターンの形成と非線形ダイナミクスとして意義がある。 2.自己混合レーザ計測 (1)LD励起薄片固体レーザを用いて、微粒子の平均粒径の迅速・高精度な計測装置を開発した。変調波パワースペクトルの粒子径(20nm-500nm)並びにその濃度依存性(0.001-10%)を系統的に測定し、Rayleigh-Debye-Gansの理論が正確に再現された。変調パワースペクトルから直接に、混合試料の迅速な粒径分布計測を達成した。 (2)開発した自己混合レーザ粒子計測装置のバイオセンサーへ適用を試みた。海水中を運動する植物プランクトンを散乱体として計測を行った。自発的には動けないブラウン運動するプランクトンでは、レーザはローレンツ型の変調パワースペクトルを呈し、大きさの迅速な測定が達成された。鞭毛を素早く動かし運動するプランクトンの速度統計分布の計測に世界に先駆けて成功し、ガウス統計に従うことが見出された。
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