研究概要 |
アレイ導波路格子(AWG)の小型分光センサへの適用を提案し,試料挿入溝を作製して高精度な分光センシング手法の原理確認実験を行ってきた。この研究成果をふまえ,本年度に以下の研究を進めたので,得られた主な成果をまとめる。 1.可視域小型バイオ分光センサの感度および精度向上の実現 試料挿入溝において吸収による影響を拡大するために,透過光の光路長を長く,かつ回折損失を低減させることのできる複数本の試料挿入溝を作製し,高感度化を試みた。可視AWG小型分光センサの入力側スラブ導波路内に幅30μmのダイシング溝を5本形成し,吸光度1.0(光路長1mm)の変化に対し1.5dBの差で識別できる試料挿入溝を実現した。 2.多波長チャネルを用いた多変量変数解析の光学的アルゴリズムの構築と実証 可視AWG小型分光センサの入力導波路に基板レスバンドパスフィルタ(3.0mm X 0.5mm X 0.02mm)を挿入し,平面光波回路基板に一体化させ,Free Spectrum Rangeごとに生じる余分な次数のスペクトル成分を除去した。さらに,データ高速処理用イメージセンサ(画素数512×58pixels^2)を使用し,多波長チャネルの同時検出を実現した。 3.可視域試作AWGバイオ分光センサを用いたリアルタイム環境センシング 試作した可視域小型バイオ分光センサとアレイ受光デバイスを組み合わせた液体試料識別実験を行った。試料として環境指標の1つでもあるクロロフィルaとb溶液を選び,異なる吸収極大波長(663nm,645nm)における透過光強度が変化し,吸光度1.0(光路長1mm)に対し1.4dBの差で識別することに成功した。
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