研究概要 |
2年間の研究期間において,波長分解能の向上と小型化を同時に実現する高性能なアレイ導波路格子(AWG)を用いた小型分光センサを考案した。AWGの導波路中に設けた細溝に液体試料を滴下し,参照液体と液体試料の透過光強度特性を比較することによって,液体試料の濃度を推定する新しい小型分光センサの提案・開発を行った。得られた主要な成果を以下に記述する。1.アレイ導波路格子(AWG)を用いた小型バイオ分光センサの提案と試作 試作したチャネル間隔0.4nm,チャネル数80,中心波長1544.4nmの小型AWGバイオ分光センサを用いた濃度測定実験において,酢酸ナトリウム水溶液の調整時の濃度と実験から求まる濃度の差が±0.25wt%になり,センサの有効性を確認した。 2.小型AWGバイオ分光センサの精度向上の実現 小型AWGバイオ分光センサの高感度化に向けて幅30μmの溝を5本作製した直線導波路の透過率特性を測定した。リアルタイム分光センシングには複数試料挿入溝が有効であることをビーム伝搬法に基づく数値計算と評価実験の両面から実証した。 3.可視波長域AWG分光センサの実現 測定候補の多い可視波長域の分光センシング実現に向けて可視AWGの設計の最適化を行い,世界で初めて可視AWGの試作・評価を行った。測定対象に合わせて波長帯域400nm,チャネル数8の可視AWGをはじめ,5種類の設計パラメータの素子を評価し,先端物質検出の技術基盤を構築した。 4.試作した可視波長域AWG分光センサを用いた環境センシング チャネル間隔12.5nm,チャネル数8,中心波長800nmの可視光AWG小型分光センサの設計・試作を行い,環境試料であるクロロフィルa,bを透過率差1.4dBで識別することに成功した。さらに,極低濃度の液体試料検出に向けてパラボラ導波路を用いた試料挿入溝の提案・設計を行った。
|