銀塩写真感光材料での放射線の検出に対して種々の現像法を試み、各方法の得失を比較した。通常の白黒現像法は、現像銀粒子がフィラメント状になるため像がぼやけること、現像液にハイドロキノンなどの有害な現像薬品を含むので、取扱や廃液処理に問題があるので、これに代わる現像法として、金沈着現像法を開発した。これは感光したハロゲン化銀粒子を現像により還元する代わりに、1価の金イオンの不均化反応を利用して金微粒子を沈着させ、金微粒子からなる飛跡の写真像を観察するものである。沈着条件を種々探求して、その改良により明瞭な放射線飛跡の像を得ることができた。この方法は(1):より高解像度で放射線飛跡の像を得ることができる、(2):飛跡のサイズがハロゲン化銀粒子サイズに依存しないので、感光材料の選択の幅が広がる、(3):有害な現像薬品を含まないので、写真廃液の処理が容易となる、などの利点がある。金沈着現像法の原子核乳剤への適用はまだ報告例が無く、高解像度という写真感光材料の特質を活かし、欠点を克服する新しい処理法となる可能性がある。 一方、放射線検出器として各種の条件で自製塗布カラー感光材料を製作した。しかしこれらの多くは現像処理中に乳剤膜が剥離するという問題を生じたので、その改善を試みた。発色現像の後の漂白定着の処理中に剥離しやすいことが判明したので、この間に硬膜処理を導入する手法を採用した。各種硬膜法を試みた結果、現像後濃酢酸で処理することにより剥離が防止され、安定したカラー現像処理が可能となって、カラー写真を用いた放射線検出器の開発への問題点の一つが解決された。
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