研究概要 |
銀塩感光材料が放射線検出にも感光することを応用して、高エネルギー荷電粒子の弁別を試みた。高エネルギーの炭素イオンなどのビームはガン治療に用いられるが、これらのイオンビームは核破砕反応で生じた破砕片による被爆を生じる。その反応の詳細が明らかでないため、被爆線量の正確な推定が困難である。破砕片である高エネルギー荷電粒子を個々に検出して、その種類やエネルギーを同定することが求められている。高エネルギー荷電粒子の弁別は銀塩感光材料とCR-39などのプラスチック飛跡検出器が主に用いられているが、両者一長一短がある。銀塩感光材料はすべての荷電粒子を検出できるが、重い粒子の弁別能が悪く、一方、CR-39は分解能は高いが、軽い粒子は検出不可能である。 ここでは両者を組み合わせて使用し、両者から得られるデータを総合することにより、炭素イオンビームとその破砕片からなる荷電粒子の弁別を試みた。両者を精密に重ね合わせて、そこへ加速器からの290MeVの炭素イオンとその破砕片を照射した。両者に記録された荷電粒子飛跡の画像を解析し、affine変換の手法で両者の飛跡の座標の対応付けを行った。CR-39上のエッチピットサイズ測定でC、B、Beのイオンが弁別された。銀塩感光材料上の飛跡で、CR-39上の飛跡と対応がつくものを除くと、これはCr-39に記録されないH、He、Liの飛跡となる。この飛跡の写真乳剤膜中の体積を計測し、その分布をとると、2つのピークと1つの肩が検出された。これはそれぞれH、He、Liの飛跡に対応すると考えられ、その同定を試みている。 昨年に引き続き、銀塩感光材料飛跡の分解能の向上を目的として、金沈着現像法も試みた。CとHの飛跡についての分解能を,グレインデンシティや飛跡体積で測定したところ、従来の現像法より分解能が向上し、同定能力が高まることが確認された。 金沈着現像法などの銀塩感光材料の分解能を高める改良を進めることにより、銀塩感光材料とCR-39とのハイブリッド測定系での全荷電粒子の弁別への展望が開けた。
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