研究概要 |
1 光電子増倍管の斜め入射光に対する特性 光電子増倍管(PMT)R878、R375、7696の量子効率(1光子あたり発生する光電子数)と反射率の入射角特性を測定した。このため、光源としては赤、緑、青の3色を発生しうる発光ダイオードを使用した。また、PMTの窓材と同等の屈折率をもつアクリル材を用いて半正24角形断面のプリズム(Light Guide)を製作した。このことにより、空気中から照射した発光ダイオードの光が、PMTの光陰極まで殆ど直進し、15度から75度までの角度の入射光での実験が可能となった。PMTの量子効率、反射率とも、垂直入射光よりも斜め入射光に対する方が大きいことが分かった。反射率は入射光の角度と波長によるが数10%程度の大きなものであった。 PMTの光陰極を、複素屈折率をもつ薄膜と見なす光学モデルについて反射率を計算した。薄膜の厚みは光の波長によらないパラメータとし、複素屈折率は光の波長毎に異なるパラメータとして扱い、反射率のデータをよく再現できるパラメータを決定することができた。 2 シンチレータの光子集率 上記のPMTの特性を考慮して精度の高い光子集率(1MeVのγ線が発生する光子数)を求めた。ヨウ化ナトリウム、NaI(Tl)、中での光子集率は、代表的な放射線計測のノルの教科書では38,000となっているが、我々の求めた値は66,000となった。ヨウ化セシウム、CsI(Tl)、ではノルの教科書の65,000に対して、我々の求めた値は75,000であった。無機シンチレータの中で、NaI(Tl)は光子集率の基準としても扱われている。このNaI(Tl)の光子集率が大きく異なっていたことが本研究で明らかになった。今後他の無機シンチレータについても、系統的に光子集率を確定していきたい。
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