研究概要 |
本研究課題のこれまでの主要成果のひとつに,Lie変換理論に基づく逆問題用の高速プログラムLINAがある.今年度は,LINAの高速性に着目し,時間依存するハミルトン系へのLie(逆)変換問題への一般化を方向に据えた.これは,代表者が複雑系に深く関わる現在の所属に異動したことで得た着想である.海外研究協力者S.Vinitsky教授との検討を経て,無限次元ハミルトン系としての時間依存型Schroedinger方程式への応用をブルガリア科学アカデミーのメンバーを加えて行った.我々が開発したGATEO(Generation of Approximations of Time-Evolution)と呼ばれる数式処理アルゴリズムを境界要素法等と組み合る新手法を提案し,その有効性をレーザー場中のPoeshl-Teller原子について確認した.この成果は,査読つきの国際会議論文集(CASC2005)に掲載・口頭発表の他,国際会議Quantum Physics and Informationにおいても口頭発表されている. 逆問題の理工学への別の応用の方向性として量子ドットなどに結びつく量子ポテンシャル同定を考察した.その過程で,量子ドットの活用が期待される量子計算分野において探索アルゴリズムの新たな量子情報幾何的性質とそこから派生する積分可能系を発見し(石渡康恵(京大情報,日本IBM),日野英逸(京大情報,日立)と共同),速報的論文は掲載が決定されている.また,上記国際会議Quantum Physics and Informationと同時期・同地開催された国際ワークショップSuperintegrablity in Classical and Quantum Systemsで成果発表された.この成果から見出されたポテンシャルに関して,逆問題からの更なる検討が課題である.
|