確率共鳴現象を主として、数理工学および情報論的な立場から考察した。 1)単純閾値系におけるエルゴード非エルゴード転移:これまで分子場方程式の解を議論することで転移が議論されてきたが、我々は分布関数の時間変化を議論することにより精密な議論を展開した。 2)相互情報量と確率共鳴:相互情報量の観点から確率共鳴を考察した。すなわち、単純な閾値系に周期的、あるいは非周期的な外乱を加え、これに対する系の応答を議論し、確かに最適なノイズ強度に対して、相互情報量が最大になることを示した。 3)自己調節とノイズ効果:生物系の聴覚の高感度性を説明するモデルとして最近セルフチューニングと呼ばれる機構が提案されている。我々はこれとフィルター理論を組み合わせ、入力再生機構を作った。応用として、新しい画像処理機構を構築した。ノイズ強度を変化させたとき、この系ではもはや確率共鳴現象は起きず、ノイズの小さいときも大きいときも同様に最適な情報処理機構が働いていることを示した。 4)マクナマラービーゼンフェルト解析の拡張:2準位系ではマクナマラービーゼンフェルトの解析手法が使える。これをセルフチューニング系に適応し、多くの解析的な結果を得た。これらは、シミュレーションに伴うノイズによって結果が汚されないので、自己調節全般に見通しのよい結果を与えた。
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