研究概要 |
実験で得られた複雑な岩体の変形挙動の理解を深めるために,多くの仮定の下に,同じ様な温度サイクル下での岩体試験片の熱変形および熱応力についてシミュレーションを行った. 氷結を伴う変形挙動は,(1)氷結領域と未氷結領域の境界が時間と共に移動する移動境界値問題であること,(2)氷結に伴い水分が大きく膨張すること,(3)水で飽和した岩体もその水が氷結した岩体もいわば"複合材"であること等の複雑な様相を呈し,その解析は大変困難であるが,実験との定性的に一致するシミュレーション結果を得た. 水で飽和した岩体試験片を室温から氷点以下に冷却し再び室温に戻す温度サイクルに対する試験片の熱変形と熱応力のシミュレーションの概要を示す. まず,簡単のため,試験片は球形とした.また,各種の熱的機械的物性値は温度に依存しないと仮定した.温度場のシミュレーション手法としては,試験片内の氷結領域と未氷結領域間の移動境界に対し座標変換による境界固定法を採用し,移動境界では"複合材"向きに修正したステファン条件を用いた.両領域に対しCrank-Nicolson法を適用した.球表面では,ビオー数を仮定して熱伝達を考慮した.球の表面は応力自由として,求められた温度場を用いて熱ひずみと熱応力を求めた.この際,氷結が進行する過程では未氷結領域の水は岩体中の空隙に完全に閉じこめられ,熱膨張係数や弾性係数に寄与すると仮定し,融解過程では空隙水は熱膨張係数や弾性係数には寄与しないと仮定した.これらの係数は,岩体と水,岩体と氷の複合材として(球状介在物の仮定の下)Mori・Tanakaの式で算定した.更にMicromechanicsに基づき空隙中に含まれる水分の氷結に伴う岩体の氷結ひずみ(平均残留ひずみ)を算出する公式を用い,それに基づいて試験片の氷結ひずみと氷結応力を求めた.
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