研究概要 |
本研究では,複合材構造の信頼性・安全性の一層の向上を図るため,圧電センサを埋込んだ知的積層複合材構造について,異物衝突をモニターする衝撃荷重同定法を開発するとともに,同定した衝撃荷重より損傷解析モデルに基づき,複合材構造物の損傷位置と損傷程度を予測する損傷モニタリング法を開発することを目的とした.本研究により得られた主要な成果は以下の通りである. 1.圧電センサを組み込んだCFRP積層板およびアルミニウム板について,センサ応答から衝撃荷重の位置および履歴を実時間で同定する衝撃荷重同定法を確立し,インパルスハンマーによる打撃実験によりその有効性を検証した.本研究において,2種類の衝撃荷重履歴同定手法を開発した.第1の手法は,直接衝撃荷重の時間領域の各値を用いて,新たに提案した最適化手法に基づいて衝撃荷重履歴を同定するものである.第2の手法は,チェビシェフ多項式を用いて衝撃荷重履歴を近似することにより,衝撃荷重履歴同定における数値振動を抑制するものである.本手法により,従来開発された手法と比べ,短時間(異物衝突後2〜3秒以内)および高精度の衝撃荷重同定を行うことが可能となった. 2.低速衝撃荷重を受けるCFRP積層板の損傷進展解析のための高精度有限要素モデルを開発した.この有限要素モデルは,衝撃荷重を受けた積層板に生じる様々な破壊現象の判別および損傷進展挙動の模擬が可能である.このモデルを用いることにより,低速衝撃荷重下におけるCFRP積層板の内部損傷進展シミュレーションが可能となった. 3.開発した高精度有限要素モデルを用いて,様々な衝撃パラメータとCFRP積層板の内部損傷の関係を調べた.特に,衝撃速度・衝撃エネルギーと最大衝撃荷重・内部損傷程度の関係を明らかにした。また,CFRP積層板積層構成は内部損傷に対して大きな影響を持つことを示した. 4.本手法により推定した最大衝撃荷重と上記の数値モデルを用いて,衝撃損傷の種類と大きさを予測する衝撃損傷モニタリング法を開発し,実時間での損傷モニタリングが可能となった.
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