研究課題
半導体量子ドットの発光状態(光のエネルギーと強度)を利用して、半導体表面近傍のナノスケールの局所的な歪を測定する技術の開発を目的とし、InGaAs/GaAsヘテロ構造(量子ドット)を持つ半導体について、光ファイバープローブによる押込み試験を実施した。得られた発光状態の押し込み量依存性について、押し込み領域の歪を三次元弾性理論により、歪がバンドギャップに及ぼす影響を歪ハミルトニアンにより、それぞれ計算した。さらに、半導体ヘテロ構造のナノスケール押込み歪を評価する際に、三次元線形等方性弾性論、三次元線形異方性弾性論、有限変形理論が果たす役割を、実験結果と予測結果を比較することにより検討した。試験片はInGaAsの量子ドットを含むGaAs基板であり、面方位は[001]である。半導体量子ドットの大きさは高さ約8[nm]、一辺約20[nm]の四角錐形状と考えられている。表面から約50[nm]下に約100[nm]間隔で均一に分布している。使用する針は光ファイバープローブで先端の曲率半径は約500[nm]、環境は超高真空(9×10^<-5>[Pa])で低温(9[K])である。試験片の下に歪ゲージ式ロードセルを設置し、変位制御で押し込み、発光状態と荷重を測定した。横軸を押し込み量とし、明るさを発光強度とし、輝線の連なりが同一量子ドットからの発光エネルギーの変化を表す図を作成した。押し込みに伴い、発光エネルギーが増加するとともに、発光増強現象が現れた。微小押込み歪場は周囲の拘束の効果によって、三軸応力状態の歪場となり、z方向垂直歪のz方向分布は或る深さで極大値をとる。すなわち、この三軸応力状態の応力場においては、押込み方向に加えて、周囲の拘束に起因して、それに直角方向の応力が発生し、深くなるに伴い押込み方向応力よりも速く減少する。この結果、E_<LH>のシフト量の深さ方向分布も或る深さで極大値をとる。この歪分布形状は接触円半径に比例するので、押込み荷重が増加すると、極大値の位置は深さ方向に移動する。歪によるエネルギーバンドの変化と量子ドットのエネルギーバンドを考慮した、エネルギーバンドの深さ方向分布を作成した。Ecのシフト量は深くなるほどに小さくなる。電子はEc上を移動し、深い方向に移動しやすい。正孔はElhかEhhの高い方のバンド上を移動し、エネルギーが高い方に移動しやすい。計算結果よりElhの方が上にあるので正孔はElh上を移動する。Elhの極大値の位置は荷重が大きくなるほど深くなる。押し込み荷重の場合、Elhは50[nm]付近で極大値を示しており、この位置に正孔が集まりやすいことを示している。
すべて 2005 2004
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