本研究では、量子ドットの発光特性を利用した表面直下ナノスケール領域における歪の実験解析手法を確立することを目的とした。平成16年度に引き続き、ナノスケール領域の圧子押し込み状態における歪の変化に対する発光状態の変化の測定分解能を調べるために、量子ドットを含む半導体の超微小圧子押し込み試験を行った。圧子押し込み荷重と変位を測定し、生じた歪を評価した。押し込み試験は、現有設備である微小材料試験機MTS Tytron250を用いて実施した。圧子押し込み荷重増分に対する試験片の発光特性変化を測定し、測定歪分解能を評価した。圧子押し込み方向を[100]方位、[110]方位、[111]方位とし、測定歪分解能に及ぼす結晶方位の影響を明らかにした。基本的歪状態におけるエネルギーバンドの変化に関する理論に基づき、量子ドットの発光特性分布(波長変化と発光強度変化)からエネルギーバンドの変化を通して、歪分布を定量的に評価する解析手法を確立した。表面直下ナノスケール領域の力学的作用に対する歪応答特性を明らかにするために、ナノインデンテーション試験を行った。現有設備である原子間力顕微鏡Nanoscopeを用いて押し込み、その歪状態を現有設備である超音波顕微鏡日立HSAM220を用いて超音波伝搬特性から測定した。ナノスケール領域の圧子押し込み後、除荷状態における残留歪の分布に対する発光状態の分布測定の分解能を調べるために、超微小圧子押し込み試験後の試験片の発光分布測定試験を行った。
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