研究概要 |
本研究の最終目的は,生体材料モデル構築のため,材料試験法を開発することである.その端緒として,X線CT技術の高度化により,ある時点を基準とした形の変化が観測できるとの前提に立ち,固体に関する力学的検討を行う際に基本となる,変位場を評価する方法を開発した. 問題設定 無負荷である基準状態と,外力が加わり変形した荷重状態双方について,十分小さな間隔をおいてX線CT画像を撮影し,三次元画像が構成可能な,画素重心の座標と画素値のデータがそろっているものとする.これら2組のデータセットを用いて,物体内部のある物質点が,荷重負荷によりどの位置に移動したかを特定する. 変位関数の検討 無負荷状態でのある物質点の位置と,同一物質点の荷重状態での位置の関係を記述するのが変位関数である.これまでは,フーリエ級数を基底関数として採用したが,少ない項数で実用に耐える近似を行うため,B-スプライン関数を採用することとした.これにより,変位場の複雑度の違いにあわせて,動的に非線形度を変化させることが可能となった.すなわち,B-スプライン関数の節点を,最初は粗く等間隔の格子点として設定する.変位場同定の進行にあわせて,機動的に節点間隔を変化させる.この操作には,アダプティブ有限要素法のh法が応用できる.これにより,部分的な変位場の複雑度の違いに対処できる. 変位場同定 B-スプライン関数の未知係数を仮に与え,仮想変位場を設定する.実際に計測された画素値分布と,仮想変位場にしたがって変形前画素値分布を仮想的に変形させたものとの差を誤差関数とする.その誤差関数を最小化する未知系数値を勾配法の一種である,Levenberg-Marquardt法により求める. 以上の定式を導出し,人為的に作成した画像データを用いて,提示した手法の妥当性を確認した.
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