研究概要 |
納入(AR)および焼き鈍し(A)た非結晶性高分子材料の降伏は,すべり線の発生,せん断帯の発生・成長によって起こり,応力-ひずみ曲線には応力ピークとそれに続く応力降下が現れる.一方,ガラス転移温度以上から急冷した(焼き入れ;Q)試験片では,漠然としたせん断帯の発生によって降伏は進行し,応力-ひずみ曲線上には明確な降伏ピークを示さないことを示してきた.本実験では,4種の非結晶性高分子材料ポリ塩化ビニル(PVC),ポリカーボネイト(PC),アクリル(PMMA),ポリエチレンテレフタレイト(PET)の4種類を用いて,(1)新発見現象の再確認,(2)Q処理による材料の変質,および応用としての(3)き裂回りの塑性変形および成長,(4)ECAP加工への応用の実験を行った.その結果,1.使用した材料について,新発見した現象を再確認した,2.Q処理による材料の内部変化,a.比重の微少な現象,b.動的粘弾性的性質である損失正接tanδは,ガラス転移温度以下では,Q材の方がARおよびA材の値より高くなる,c.PMMA材では,Q材の灯油(溶剤)拡散は,AR材より以上に大きくなること,3.き裂先端部に形成される塑性変形域とき裂成長速度がAR材とQ材で異なることを示した.以上に示したことは,Q材では自由体積が増加し,内部分子鎖が動き易くなり,AR材との降伏機構の違いをもたらすことを示唆するようである.さらなる解明は,高分子材料の降伏機構を明らかにする上で重要であると考えられ,詳細な研究を続ける必要がある.
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