研究概要 |
下限界応力拡大係数範囲ΔK_<th>(=K_<th, max>-K_<th, min>)についてはここ数年間に新展開があり,従来ΔK_<th>の影響因子と考えられていた「き裂閉口」「環境」が考えにくい状況下K_<th, max>増によるΔK_<th>の漸減現象が特定の材料に対し報告されている. 本研究では,平成16年度にまずK_<max>一定下ΔK_<th>試験を実施することにより「き裂閉口」がない状態を,不活性ガス雰囲気中にて試験を行うことにより「環境」の影響がない状態を実現し,この下で申請者らが提案しているメゾスコピックモデルによりK_<th, max>増によるΔK_<th>の漸減現象が現れると予測される材料(たとえばS55C)に対し予測の妥当性を実験的に検証した.あわせてSLC(Sustained Load Cracking)試験を大気中で行うことにより,保持荷重下のき裂進展が大気中であってもないことを実験的に検証した.以上の結果より申請者らが提案しているメゾスコピックモデルによりK_<th, max>増によるΔK_<th>の漸減現象が予測できること,そしてその原因として環境効果が考えにくいことを実験的に確認した. 17年度は,主として,提案しているメゾスコピックモデルによる数値シミュレーションを行い,提案しているモデルの検証を行った.まず,S55Cを念頭に置いた数値シミュレーションを行い,K_<th, max>増によるΔK_<th>の漸減現象を再現した.その後,S55Cに対しK_<th, max>増によるΔK_<th>の漸減現象が再現できたときの基本材料抵抗値の設定方法を,他の材料(Al, Ti)にも適用し,シミュレーションによりK_<th, max>増によるΔK_<th>の漸減現象の有無を予測した.その結果が実験結果と対応している場合に,提案しているモデルの検証ができたと判断することにし,予想通りの結果を得た.最後に,K_<th, max>増によるΔK_<th>の漸減現象発生の有無を容易に予測可能とする判定線図を作成し,最終的な成果をまとめた.
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