研究概要 |
本課題の目的は,MEMSの強度設計を行うとともにその健全性を保証するため,疲労損傷を評価するシステムを構築することである.そのため,本研究では,原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope,AFM)および背面電子回折(Electron Back Scattering Pattern,EBSP)法を用いる方法を提案した.AFMでは,疲労すべり帯によって生じた表面凹凸の量を測定することが可能であり,EBSP法では,結晶方位を同定することができる.両者を併用することによって,すべり方向のすべり量を測定することができ,それによって結晶金属材料の疲労損傷評価ができることを結晶性のバルク材について明らかにした.次いで,圧電素子を駆動源とする小型の疲労試験機を製作した.現在,光効果樹脂を用いて長さ100μm,幅10μm,高さ10μm程度の微小片持ちはり試験片を製作し,曲げ試験を行っている.さらに,板厚3mmの70-30黄銅を用いて,冷間圧延,焼鈍しを繰り返すことにより,板厚100μm,平均結晶1.5μmの超微結晶粒薄膜試験片を製作することに成功した.これを用いて疲労試験を行ったところ,超微細結晶粒材薄膜材の疲労強度は,通常の材料より疲労強度がはるかに大きいことが明らかになった.さらに,厚さ10μmアルミニウムの薄膜試験片を製作することにも成功し,疲労試験を行うことができた.また,疲労過程中のこれら試験片表面をAFMによって観察した結果,すべり帯の形状がバルク材とは異なることが明らかになった.また,結晶塑性論および転位拡散論を用いた数値シミュレーションを行った.
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