研究概要 |
本研究の目的の一つである解析の効率化に対して、種々の分野で活発に研究されている高速多重極境界要素法を腐食問題に適用するための研究を行った。その結果、腐食問題では分極曲線に起因する非線形性や海水や土壌中の構造物を解析する際に遭遇する無限領域を取り扱うために、特別の工夫が必要となることを除けば、ポテンシャル問題に対する多くの方法を応用できることを明らかにした。この結果をComputer Modelling in Engineering and Sciences誌に発表した。 コンクリート内部の鉄筋腐食部分の近傍には、微細な多くの亀裂などを含む場合がある。亀裂を含む領域はその他の領域と電気伝導度が異なるため、コンクリートは不均一となる。このような場合の鉄筋腐食を検出するために、領域分割境界要素法を開発した。まず、腐食による電場を順解析するために、電気伝導度(実数)の異なる3次元領域を扱う領域分割法を開発し、つぎに、交流を印加する場合のために複素電気伝導度が異なる3次元領域を取り扱う領域分割法を開発した。 鉄筋を持つコンクリートの試験片からコンクリートの複素電気伝導度および鉄筋とコンクリートの間のインピーダンスを同時に決定するための境界要素逆解析を行った。測定点の位置や数を種々に変えてシミュレーションを行い、労力が少なく、精度の高い測定条件を明らかにした。 遺伝的アルゴリズム(Generic Algorithm)による腐食検出のシミュレーションを行い,他の方法では必要となる腐食個数や腐食形状の仮定を設けなくても、腐食検出が可能であることを確認した。この結果をIndonesia-Japan Joint Scientific Symposium2004で発表した。 磁場計測による腐食検出のための境界要素解析を行い、ポテンシャル計測による腐食検出よりも高い精度が得られることを示し、コンクリートかぶりが厚い場合や複数層の鉄筋が存在する場合に利用できる可能性があることを示した。この結果をInternational Journal of Corrosion(NACE)誌に投稿した。
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