研究概要 |
プラスチック発泡体の気泡核生成数は発泡剤含浸後,発泡温度が樹脂のガラス転移温度以上の温度で圧力差が大きくかつ急速減圧であるほうが増え,微細な気泡径を有する発泡体が得られる.つまり,発泡温度と減圧速度を制御することにより発泡体の内部構造を種々に変えることが可能となる.発泡温度と減圧速度の関係は,プラスチックの粘弾性特性である時間と温度の等価性により評価が可能と考えられる.つまり,低温長時間の現象は,高温で短時間の現象と等価性があると仮定すると,発泡において低温で緩慢の減圧は,高温での急速減圧の場合と等価と考えられる.発泡温度と減圧速度の等価関係を明らかにすることにより,任意の気泡密度を有する発泡体を任意の発泡温度で成形する際の減圧速度が予測でき,予測した減圧速度が現状の制御装置では実現が困難ならば,新しい装置の開発の必要性を見出すことができる. 本研究は,プラスチックの粘弾性特性の時間と温度の等価性を基に,発泡体内部の気泡密度に関する発泡温度と減圧速度の等価関係について検討した.非晶性樹脂であるポリスチレン樹脂(PS)を用いて,種々の発泡温度,一定圧力の下で種々に減圧速度を変えて発泡成形を行った.そしてポリスチレン樹脂発泡体内部の気泡密度に対する発泡温度と減圧速度,つまり減圧時間の関係について調査した.その結果以下の事を明らかにすることができた. 1.PS発泡体の気泡密度は発泡温度が低い程,減圧連度が速いつまり減圧時間が短い程多く,そして発泡温度が高い程,減圧速度が遅いつまり減圧時間が長い程少なくなる時間及び温度依存性を示す. 2.PS発泡体の気泡密度の温度依存性と時間依存性の間には相関性があり,一本のマスター曲線で表現することができる. 3.PS発泡体の気泡密度は発泡温度が気泡成長の限界となるガラス転移温度に近い低温側の粘弾性領域で,かつ減圧速度が速い程大きくすることができる. 4.PS発泡体の気泡密度に関する時間と温度の相関性を基に,任意の気泡密度を有する発泡体を成形する際に必要な成形条件の予測が可能である.
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