アルミニウム合金に各種の条件の表面処理を行い、フレッティング疲労強度に関する基礎的データを収集した。 供試材として展伸用アルミニウム合金(JIS A7N01材)を用い、表面には膜厚を変化させたアルマイト処理を施し、通常疲労試験およびフレッティング疲労試験を行い、それら疲労強度に及ぼすアルマイト膜厚の影響について検討した。 通常疲労強度試験においては、アルマイト材の通常疲労寿命は膜厚の小さい場合は未処理材と同程度であるが、アルマイトの膜厚が増大するとともに疲労限度は低下する傾向が認められた。この疲労限度低下の原因は、繰り返し応力による母材の変形に対しアルマイト皮膜が追従できなくなり、皮膜の微細な空孔が疲労き裂の起点となったことに起因するものと思われる。 フレッティング疲労試験においては、アルマイト膜厚の変化による影響はほとんど認められず、未処理材の疲労寿命に比べわずかではあるが向上していることが明らかとなった。アルマイト材のフレッティング疲労寿命が未処理材のそれに比べて向上したのは、アルマイト皮膜の存在により接触片との接線力係数が低下したために応力集中が緩和され、き裂の発生・進展がおそくなったものと推察される。 以上の結果をふまえて、母材の変形に対する追従性を考慮した軟質アルマイト処理、また表面に残留圧縮応力を付与するためにステンレス球を用いてウエットブラスト処理を行い、これらの処理を複合化させ疲労試験を行った。その結果、軟質アルマイトは母材との接触部に欠陥があり、疲労寿命の改善には至らなかったが、ブラスト処理とアルマイト処理の複合化により10〜20%の疲労寿命の改善が見られた。今後これらの複合化の最適化について検討する。
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