研究概要 |
本研究は,砥石作業面状態の客観的評価・形成を可能にし,その作業面状態を長期にわたり保ち続けるために有効な手段を提供することにより鏡面研削加工のプロセス制御性を向上させることを最終的な目的としている.本年度は,本研究の主な検討課題のうち,「鏡面研削加工への超音波重畳クーラント適用技術」に関する検討を行った. まず超音波重畳クーラントによる仕上げ面粗さ向上効果を実験的に検証した.その結果,クーラントに超音波を重畳すると,仕上げ面粗さに決定的な影響を及ぼすスクラッチの頻度と深さを顕著に低減できることが明らかになった. 次にクーラントへの超音波重畳によるこの効果の作用メカニズムについて,クーラント供給状態および砥石作業面状態の観察および評価に基づいて検討した.その結果,超音波を重畳すると,クーラントは砥石に連れ回る空気流に打ち勝って砥石表面あるいは加工点に到達しやすくなることがわかった.このことは,加工点においてより安定してクーラントの各種作用を生じさせることになると考えられる.また,砥石作業面上においては,研削に伴う切りくずの堆積や溶着を効果的に抑制でき,さらに砥石摩耗を低減することが確認できた.これらにより砥石作業面状態は,より長期に渡り良好な状態に保たれ,仕上げ面粗さを向上すると考えられる. 以上を踏まえて,高硬度焼入れ鋼SCM435に対して準鏡面研削,すなわち仕上げ面粗さの最大高さRz<0.4μmを満たす研削加工を行うことを試みた.その結果,超音波重畳クーラントを用いると全ての研削条件において仕上げ面粗さが向上するとともに,より長期にわたりその良好な状態を維持しつづけることが確認できた. 今後は,まず仕上げ面粗さRz<0.1μm以下の鏡面研削に超音波重畳クーラント技術を適用し,そのプロセスをより合理的かつ安定なものとするよう技術的に改善を図っていく.
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