高耐圧、低損失の半導体としてSiを凌駕するデバイス特性が注目されるSiC単結晶は極めて硬く化学的にも安定な難加工材料であり、軟質砥粒によるメカノケミカルポリシングが唯一の高能率・高平滑・無歪研磨法として期待されている。従来からCr_2O_3が有効なMCP砥粒として知られているが、六価クロム発生の懸念から生産ラインでの使用は敬遠されている。Cr_2O_3に替わるSiC単結晶研磨用無公害MCP砥粒としてTiO_2およびFe_2O_3微粒子の有効性を見出した。特にTiO_2は紫外線照射による酸化触媒効果が顕著な粒子として注目されており、SiCの表面酸化促進作用による研磨能率の向上が期待される。界面化学反応を利用するMCPでは、加工界面が高温環境に曝されるほど化学反応が促進され、研磨能率も向上することが期待される。 そこで本年度は、紫外線透過性ポリシャを通して加工界面への紫外線照射が可能で、しかも約300℃までの試料加熱が可能なヒーター組込み型の研磨装置を試作し、光触媒効果と高温研磨効果を重畳させた高能率SiC単結晶ウェハ研磨技術の開発を開始した。具体的にはワークホルダー加熱・負荷機構:50〜75mmΦのウェハをセットし、研磨圧力20〜100kPa、ホルダー回転数0〜30rpm、かつ室温〜300℃の任意温度でウェハを加熱可能で、かつ紫外線を透過し得る石英ガラスポリシャを0〜100rpmで連続回転可能な構造の高温乾式研磨機構を試作し、Fe2O3砥粒およびTiO2砥粒によるSiCウェハの研磨実験を実施した。ポリシャ温度230℃においてワーク回転数、ポリシャ回転数、などの研磨条件を変えて研磨能率・表面粗さの変化等を調査し、研磨条件の最適化を図った。但し紫外線照射装置の導入は来年度予定となっており、光触媒効果についての知見は得られなかった。
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