高耐圧、低損失の半導体としてSiを凌駕するデバイス特性が注目されるSiC単結晶の高能率・高平滑・無歪研磨法として期待されている軟質砥粒によるメカノケミカルポリシング用砥粒として従来からCr_2O_3が有効なMCP砥粒として知られているが、六価クロム発生の懸念からCr_2O_3に替わるSiC単結晶研磨用無公害MCP砥粒として昨年度までの研究からTiO_2およびFe_2O_3微粒子の有効性が見出された。特にTiO_2は紫外線照射による酸化触媒効果が顕著な粒子として注目されており、SiCの表面酸化促進作用による研磨能率の向上が期待される。また界面化学反応を利用するMCPでは、加工界面が高温環境に曝されるほど化学反応が促進され、研磨能率も向上することが期待される。以上の経過から昨年度に紫外線透過性ポリシャを通して加工界面への紫外線照射が可能で、しかも約300℃までの試料加熱が可能なヒーター組込み型の研磨装置を試作し、光触媒効果と高温研磨効果を重畳させた高能率SiC単結晶ウェハ研磨技術の開発を開始した。Fe2O3砥粒およびTiO2砥粒によるSiCウェハの研磨実験を実施した。ポリシャ温度230℃においてワーク回転数、ポリシャ回転数、などの研磨条件を変えて研磨能率・表面粗さの変化等を調査し、研磨条件の最適化を図った。 本年度新たに得られた成果として、軟鋼板を研磨定盤として用い、大気中で定盤を高温加熱することにより、砥粒の供給無し(砥粒レス)状態でもSiCウェハの研磨が可能であることが見出された。これは定盤自身が高温酸化を起こし、生じた酸化鉄層がMCP砥粒として効率的に働いたためと推測され、今後の新しい研磨技術としての発展可能性が見出された。なお、本年度は更に光触媒効果を検証するために紫外線照射装置を導入した。但し、挿入装置の仕様決定や機種選定のための予備実験に時間がかかり、導入装置を使っての実験は現在続行中である。
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