昨年度に開発した凝着力測定システムを用いて、各種金属材料に鋭角ダイヤモンド圧子を押込み、そのときに生じる凝着力を測定した。またそれと平行して同一条件下で摩擦試験を行って摩擦係数を測定した。これより凝着係数と摩擦係数の間に相関があるかどうかを調べた。しかしながら、ダイヤモンドと金属の摩擦における摩擦係数は、潤滑・無潤滑を問わず、0.1〜0.15の範囲にあり大きな差異を示さないため、ダイヤモンド圧子を用いての実験では凝着係数と摩擦係数の間に明確な相関があるかどうかを見出すことはできなかった。そこで、圧子材料を超硬圧子とし、また試験片として無酸素銅またはS45C鋼を用いて同様な実験を行い、凝着係数と摩擦係数の間に強い相関があることを見出した。また、この実験で、試験片材料ごとに整理すれば、一定の押込み荷重で生じる圧痕の大きさは潤滑条件により異なることを見出した。一方、圧痕表面に作用する面圧は、潤滑条件を変えてもほとんど変化しないことを示した。この結果を応用すれば、押込み試験から摩擦係数が推定できることを示した。すなわち、この推定摩擦係数と摩擦試験により実測した摩擦係数の関係を求めると、ほぼ一致することを見出し、潤滑状態の良否が押込み試験で推定できる可能性を示した。
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