研究課題
基盤研究(C)
固体間の接触により生じる凝着現象は、摩擦・摩耗の根幹をなす現象である。しかし、固体間に生じる凝着力を直接測定した報告は、真空中の清浄な金属表面間の測定、あるいはインジウムのような軟質金属/鋼の接触を除けば、ほとんどないのが現状である。本研究は、このような観点から実用摩擦材料の凝着に関する研究の一環として、凝着力測定機を開発し、種々の実用摩擦材料に対して鋭角なダイアモンド圧子を押込んだときの凝着力を実用環境下(大気中無潤滑および潤滑下)で測定し、その凝着メカニズムを検討した。また、凝着力測定の応用として、各種潤滑油剤の存在下での摩擦係数と凝着力の関係を調べ、凝着力から静摩擦係数を推定できないか、圧痕の大きさから静摩擦係数を推定できないかを調べた。得られた結論は、次の通りである。1)凝着力は圧子角度の影響を強く受け、圧子角度が鋭角なほど大きくなる。2)凝着力は、相手材料により異なり、特にチタン合金は他の材料に比べて大きな凝着力を示す。3)凝着力は、無潤滑中と塗布した潤滑油中では同程度の値を示す。一方、潤滑油中でフレッチングを行った面の凝着力はそれらより低下する。4)圧子角度が鋭いほど大きな凝着力を生じるのは、圧子が鋭角なほど激しい塑性流動が起こることにより緊密な凝着が生じ、また除荷時の弾性回復量が小さくなるために凝着部が破断しにくいことによる。5)種々の材料の凝着係数を材料の軟化を示すパラメータで整理すると、その間に比較的良い相関がある。6)押込み試験で生じる圧痕投影面積の大きさから得られる推定摩擦係数は、実測で得られる静摩擦係数のほぼ一致する。7)鋭角圧子の押し込みでは、圧子側面に垂直に作用する接触圧力は摩擦係数の影響を受けにくい。8)潤滑下でも凝着が生じ、そのときの凝着係数は実測で得られる静摩擦係数と良い相関がある。
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トライボロジスト 51巻・2号
ページ: 172-179
Japanese Journal of Tribology(英語版) Vol.51, No.1
ページ: 105-115
Tribologists Vol.51, No.2
Japanese Journal of Tribology(English Version edeted by Allerton press, Inc.) Vol.51, No 1
Tribology International (採択済み・掲載待ち)
Tribology International (to be published)