研究概要 |
ハーフトロイダル形無段変速機(以下CVTと記す)の小型大容量化は継続的な課題である。これまで、ダブルキャビテイ型(前後に2セットの可変速部(バリエータと呼ばれる)のあるもの)で、キャビティ当たり2個のパワローラ(可変速のための中間転動体)で、340Nmのトルク容量を持つCVTが実用化されている。これは、その可変速ユニット(バリエータと呼ばれる)の断面形状が矩形状となるため、大容量トルクを伝達する後輪駆動の車両には、円形断面のフロアトンネルと干渉することがあった。この問題を解決するためには、可変速ユニットの断面形状を円形に近くするとともに、その代表径を小さくする設計が有効である。これを実現するため、キャビティ当たりの中間転動体の数を2から3に増やすことにより、伝達トルク容量を1.5倍にすることを考えた。さらにこの構造は,ディスクのトラクション部を3点支持することになり、弾性変形が均一になり、大きなトルクへの対応性もよくなる効果が期待される。本研究は、430Nmのトルクを伝達するため、従来のディスク半径が40mmで4個のパワローラからなるものから、r_0=36.5mmで、6個のパワローラからなるものを開発し、6つのパワローラの傾転運動の同期と、CVTの効率について理論と実験により調べた。同期試験では、変速比制御に対して、6つのパワローラの傾転角は1つの応答線図に載っていることが確かめられた。この確認ができた段階で、効率試験を行ったところ、入力トルク50Nm〜200Nmにわたって、約88%となることがわかった。これらの実験に対して、理論的速度伝達効率は、トラクション部のスピンが最大となるバリエータ部変速比e_s=1においても、98%となり最大減速、増速では99%とること、及び理論トルク伝達効率も98%以上となるごとを示した。実測したトルク伝達効率が理論値に対して低い理由は、今回の設計したCVTがトラクション油温度が140℃においても、グロススリップしないようにローデイングカムをきつく設計としたため(トラクション係数を0.04とした)、6つのパワローラを支持するスラスト玉軸受のスピン損失が大きいことが理由と、分析した。今後、大トルク試験を行い、装置の伝達できるトルク限界と、ステップ状の正負反転トルクをかけた状態でも同期安定性が確保できるか試験と解析を行う予定である。
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