近年、デジタルコンテンツに関する著作権問題が重要になってきており、これに伴い「電子透かし」と呼ばれる情報をコンテンツに埋め込み著作権を保護するという研究がさかんに行われている。この研究では、従来のようにコンテンツに電子透かしを埋め込まずに、三次元形状に固有の性質、すなわち「電子指紋」に相当する情報をポリゴンメッシュデータから抽出し対象となるデータが、オリジナルからのコピーかどうかを判断する。 平成16年度の研究では、ポリゴンメッシュを効率よく扱うのに必要であるハーフエッジ構造体のソフトライブラリを整え、またガウスの発散定理を用いてポリゴンメッシュデータの体積、重心、慣性モーメントを求めるライブラリを作成した。これらのライブリを使い、オリジナルモデルと対象となるモデルのそれぞれの重心並びに慣性主軸を計算し、対象となるモデルを平行移動・回転させオリジナルモデルとマッチングさせ、また必要に応じて体積比の1/3乗あるいは面積比の1/2乗でモデルを拡大あるいは縮小させることができるようなプログラムを開発した。2つのモデル間のマッチング終了後、モデル間の距離を各頂点で求め、距離による統計的な類似度の評価方法を確立した。 最後にポリゴンメッシュを、三角メッシュであればLoopの細分割曲面、四角メッシュであればCatmull-Clarkの細分割曲面として認識し、Stamの方法に基づいて細分割曲面の極限曲面上での位置、一次微分量を計算し法線を求めるシステムを構築した。またこの手法の妥当性を調べるため、従来から提案されているポリゴンメッシュにおける法線の8つの評価方法と比較し、この手法が勝っていることを確認した。
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