近年、デジタルコンテンツに関する著作権問題が重要になってきており、これに伴い「電子透かし」と呼ばれる情報をコンテンツに埋め込み著作権を保護するという研究がさかんに行われている。この研究では、従来のようにコンテンツに電子透かしを埋め込まずに、三次元形状に固有の性質、すなわち「電子指紋」に相当する情報をポリゴンメッシュデータから抽出し対象となるデータが、オリジナルからのコピーかどうかを判断する。 平成17度の研究ではポリゴンメッシュから細分割曲面の極限曲面までの距離の差を補正する方法について重点的に研究を行なった。距離の差を補正する方法としてポリゴンメッシュを細分割曲面で高速に補間する手法を開発した。この手法は、与えられた任意のポリゴンメッシュの各頂点とこのポリゴンメッシュによって定義される極限曲面との最短距離の大きさを求め、初期ポリゴンメッシュを法線方向にこの大きさだけオフセットすることにより、新たな制御ポリゴンを求める。これらの操作を繰り返すことによって、初期ポリゴンメッシュを補間する細分割曲面を生成することができる。平成18度の研究では平成17年度の研究成果を踏まえ、ポリゴンメッシュの各頂点における法線並びに曲率の計算を補間された細分割曲面上で行った。この結果、特異点以外の点では、従来から提案されている方法よりも高い精度の評価が得られることが判明した。特異点近傍での評価については、現在Adi Levinの"Modified subdivision surfaces with continuous curvature"をもとに、改良を加えている最中である。 また、この成果は学術論文誌「Computer Aided Design」に"Interpolation by Geometric Algorithm"と言う表題で平成19年の4月号に掲載された。
|