研究概要 |
本研究の目的は,機械要素のトライボCAD設計基礎データである潤滑油高圧粘度をダイヤモンドアンビルセル(DAC)高圧発生装置を用いて実測し,油高圧物性データベースを構築する.3年目本年の研究実績を実施計画に対応させて下記に示す. 1)生分解油の高圧粘度および高圧物性の評価 植物油脂系生分解性油,脂肪酸エステルの2.7GPa,200℃までの高圧粘度を測定し,対数粘度図中で緩やかな非線形曲線となり油種による差はほとんどなかった.相転移については10Pa・sという低粘度で非ニュートン化(室温で約0.4GPa)しその後植物油脂はすべて多結晶的な半透明状となった. 2)低圧域でのDACの加圧ねじ回転角からの新しい圧力決定法による高圧粘度測定 高温時圧力較正曲線を150℃まで作成し,省エネエンジン油基油として期待されるポリアルファオレフィン(PAO4)の高圧粘度測定を行い,1GPa,150℃までこの方法が適用可能であることを実証した. 3)超高圧油中金属球の塑性変形観察による油の固化圧力と固化油のせん断応力の試算 トラクション油,エステル油中のマイクロ銅球の塑性ひずみより球近傍固化油のせん断応力を試算した.トラクション試験からの限界せん断応力とほぼ一致し,エステル油においては得られた値はトラクション油のものに比べかなり小さく,発生する圧力も2.6GPa以上と高かった. 4)高圧粘度から油の高温高圧状態図の作成とそのトラクション曲線解析への応用 得られた高圧粘度をもとに粘性域(V),粘弾性域(VE),弾塑性域(EP)の圧力,温度境界線を等粘度線と考え高圧高温状態図を2GPa,200℃の広範囲まで作成できた. 5)実用的な高圧粘度簡易表示式の構築,その自由体積との関連など高圧粘度挙動の物理的評価,総括. 実用式に関しては,粘度-圧力係数の圧力,温度依存式を得た.物理的評価式はWLF式を高圧粘度に応用した安富の式が適切と結論した.総括を成果報告書にまとめた. 6)トライボCADに有用な本実験データおよび高圧粘度文献値のデータベースホームページの検討,構築 高圧粘度データであるBridgmanの論文とASME reportほか研究者らの論文を含めた17の論文とそれらに掲載されている油種,圧力,温度範囲のデータベースホームページを作成した.
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