研究課題
本研究は、MQLによる最適加工条件、加工方法を合理的に追求する手段を明確にするため、MQL加工に適する合成系エステル潤滑剤を探索し、それらのトライボロジー特性と切削性能を詳細に検討し、その作用機構を油剤構造と関係づけて解明することを目的としている。本年度に得られた研究成果は以下のとおりである。1.合成系および比較対象となるエステルの探索とトライボロジー特性の評価MQL加工用潤滑剤の条件に合致するエステルを探索し、入手可能であった12種の合成系エステルについて、代表的な植物油のナタネ油および実績のある市販エステル系MQL用潤滑剤とともに、基礎的摩擦試験を行った。その結果、(1)モノエステルよりもポリエステルの方が潤滑性能が高い、(2)ポリエステルの中では飽和よりも不飽和エステルの方が潤滑性能が高い、(3)不飽和ポリエステルの中では化合物1分子中のエステル結合が多いものほど潤滑性能に優れる、(4)植物油は合成エステルに比べて潤滑性能が優れているとは言えない、等の知見が得られた。2.実用MQL加工試験法の確立最も代表的な切削加工である旋削に着目し、この加工方法による実用切削性能の評価条件を検討した結果、MQL供給装置からの油剤吐出量が加工性能に影響することを見出し、これにもとづいて油剤の吐出量を同等にした実用MQL加工試験法を確立した。また、切削性能の評価に切削抵抗、切くず厚さ、仕上げ面曲線要素の平均粗さ、工具摩耗を用いると、MQL加工とドライ加工の優劣が判断できることを明らかにした。3.エステルの潤滑挙動におよぼす吸着特性の影響の考察雰囲気制御切削試験機を用いて、合成エステルのモデル化合物の金属新生面への吸着特性を調べた結果、エステルの吸着活性は酸素との共存で上昇することが確認でき、この理由はエステルが金属の新生面より酸化膜に吸着しやすいためと考察した。
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Synopsis of International Tribology Conference, 2005, Kobe (30 May - 2 June, Kobe, Japan) 5月発行予定