研究概要 |
○本研究の基礎となるのは各種潤滑油の状態図である.低温光弾性試験,高圧密度試験より作成した状態図を基に次の結果が得られた. 「準静的条件下の高圧物性研究の円盤状化合物への応用」 円盤状の液晶が世界で初めて調整され,その存在が確認されたのは1977年である.この円盤状化合物(液晶,非液晶を問わず)弾性流体潤滑(EHL)条件下で低トラクション係数を呈することが報告されているが,その理由については不明であった.そこで,本研究で確立した手法で,状態図と体積弾性係数,自由体積の温度-圧力関係,粘度の温度-圧力関係式を構築した結果,液体領域での粘度圧力係数が小さいこと,また,弾塑性固体領域で包含されている自由体積が多く結果として体積弾性係数が他の油に比べ小さいことが低トラクション係数を示す理由であることを明らかにした.[トライボロジー会議 東京].なお,この手法が宇宙ステーション用潤滑油の評価にも適用できることも明らかにした.[トライボロジー会議 東京]. 「動的条件下の高圧物性とトラクション特性」 準静的条件下の高圧物性研究では加圧時間1000s程度の下で実験を行っている.EHL条件の加圧時間は0.1msであり瞬間的高圧条件下においても準静的条件下で作成した状態図が適用できるかを検証するために,打撃試験を行った.AE観測,油膜形成状態,反発挙動,打撃圧痕の精密計測等より検討した結果,準静的条件下で作成した状態図が動的高圧条件下でも適用できることを明らかにした.[Lubrication Science].さらにEHL条件下のトラクション係数も準静的条件下で作成した状態図を基に,実験条件をヘルツ接触条件下での粘弾性固体転移温度T_<VE>と油温Tとの差T_<VE>-Tで表示すれば,この条件下の体積弾性係数と密接に関係していることを明らかにした.[STLE Tribology Transactions]. 「高圧固化油の摩耗防止作用」 高圧固化油の摩耗防止作用を明確にするため,多種多様の潤滑油の状態図をまず作成し,それらの潤滑油について4球摩耗試験を行った.その結果,高圧下で固化し易い潤滑油ほど摩耗し難いことを明らかにした.[1^<st>ICMDT,Korea].
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