研究課題
平成17年度では、ピン試験片にAl-Si合金含浸グラファイト複合材(ALGR-MMC)、ディスク試験片に軸受鋼(SUJ2)を用いて、滴下潤滑条件におけるALGR-MMCのトライボロジー特性に及ぼす雰囲気の影響を調べることを目的とした。試験前のみにエンジン基油(SAE30+AO,9.3〜12.5 cSt at 100℃)の滴下を行い、その油量は0.005cm^3,0.01cm^3および0.02cm^3の極めて微量である。荷重100N、すべり速度0.15m/s、全すべり距離5,000m以内で、相対湿度(RH)を変数として一方向すべり摩擦・摩耗を行った。試験中に摩擦や摩耗に関する諸量を測定して、得られた結果からALGR-MMCの摩擦・摩耗特性に及ぼす過酷な潤滑条件下における空気中湿度の影響について調査・考察した。本試験で得られた多数の摩耗曲線は3つのタイプに分類される。Type1では、試験開始直後にピンの持ち上がり現象が現れ、多少データがばらついたのち緩やかな摩耗に移る。Type2では、試験開始直後にピンの持ち上がり現象が現れた後緩やかな摩耗または無摩耗状態に移行し、再びピンの持ち上がり現象が現れた後に油膜破断が生じる。Type3では、試験開始直後にピンが持ち上がり、そのまま試験終了までピンの摩耗が生じない。これら3つのタイプの各摩耗曲線において最も安定した区間を定常期と定義する。得られた主な結果は以下のようにまとめられる。(1)Type1の摩耗曲線は調べた全相対湿度範囲で見られるが、RH=50〜80%で出現頻度が高い。Type2の摩耗曲線はRH≦5%のみで現われるので、油膜破断が極めて低湿度で起きることが判る。またType3の摩耗曲線はRH=10〜50%の低湿度側で見られる。(2)滴下潤滑下におけるピンの定常期の摩耗率は無潤滑下の値(>10^<-7>mm^3/mm)より極めて小さい値(10^<-10>〜10^<-9>mm^3/mm)を示し、低湿度より高湿度でやや高い。Type1では各油量ともRH=70%で定常摩耗率の極大値(≒3×10^<-9>mm^3/mm)が生じる。(3)Type1の平均摩擦係数は低湿度で低い値(≒0.06)を、高湿度で比較的高い値(0.11〜0.13)を示す。Type3の平均摩擦係数は低い値(0.05〜0.06)を示し、RH=10〜50%の範囲でほぼ一定である。
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