Al合金含浸グラファイト複合材料(ピン)とその基材(ピン)対軸受鋼(ディスク)の組合せで、無潤滑、SAE30の滴下及び浸漬の潤滑方式による摩擦・摩耗特性の相違を調べた。試験前にのみ滴下を行い、油量は0.005〜1cm^3の微量である。複合材は無潤滑、滴下、浸漬状態で基材より耐摩耗性に優れ、過酷な潤滑状態下でも使用可能な摺動材料である。ディスク面に移着した被膜中のAlとCのX線強度が増加すると、複合材の摩耗率は高くなる。基材のAl-Si合金では、微量の油量で油膜破断が起こり、摩耗率は高い値を示すが、油量が増すと摩耗も油膜破断も生じない。基材のグラファイトでは、油量の増加と共に摩耗率は低下するが、浸漬状態でも複合材に比べて高い。 滴下条件下で複合材の摩耗特性に及ぼす空気中の相対湿度(RH)の影響を調べた。摩耗曲線は3つのタイプに分類され、タイプ1では、試験開始直後にピンの持ち上がり現象が現れ、その後緩やかな摩耗に移る。タイプ2では、タイプ1の過程を経て再びピンの持ち上がりが現れ、その後油膜破断が生じる。タイプ3では、ピンの持ち上がり後試験終了までピンの摩耗が生じない。タイプ1の出現頻度は50〜80%RHで高い。タイプ2は5%RH以下のみで現れ、油膜破断は極めて低湿度で起きる。タイプ3は10〜50%RHの低湿度で現れる。複合材の定常摩耗率は低湿度より高湿度でやや高く、タイプ1では70%RHで摩耗の極大値が生じる。 次に、複合材(ディスク)対軸受鋼(球)の組合せで空気中・無潤滑下のフレッティング摩擦・摩耗特性に及ぼす荷重の影響を調べた。SEMとEPMAで試験後の摩耗面の観察と元素分析を行い、摩耗面の性状から複合材の摩耗特性を考察した。試験途中に動摩擦係数と相対すべり片振幅が急激に変化する場合(Type A)と、試験終了まで一定の値を維持する場合(Type B)の2つの過程が存在する。Type Aは調べた荷重の範囲内(5〜100N)で、Type Bは高荷重(50〜100N)で現れる。両過程が現れる原因は、試験開始時の接触面におけるAl-Si合金部分とグラファイト部分の面積割合が各試験で異なるためである。
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