研究概要 |
炭素繊維強化PEEK複合材料と鍛鋼SF540Aの2種類の材料を用いて,高速・油潤滑条件下で荷重増加試験及び定荷重試験を行い,焼付き挙動に及ぼす材料の組み合わせの影響を調べた.発生した摩耗粒子の熱分解分析,レーザー回折式粒度分布測定,SEMによる形態観察及びEDX分析を行った.以下に得られた結果を示す. 1.荷重増加試験から,焼付き開始荷重は材料の組合せに強く依存することがわかった。PEEK複合材料ブロックとSF540Aリングの組合せがもっとも耐焼付き性に優れた組合せであった. 2.PEEK複合材料ブロックとSF540Aリングの組合せで行った定荷重試験では,リング温度が100℃を超えると摩擦係数が増加し始め,180℃を超えると摩擦係数が急増し焼付きに遷移した.このように,PEEK樹脂軸受の摩擦挙動は温度に非常に敏感であることがわかった.焼付きの発生によりPEEK Comp.の比摩耗量は,低摩耗率領域10^<-9>(mm^3/Nm)から高摩耗率領域10^<-7>まで急増した. 3.焼付きによって,PEEK Comp.摩耗痕内部では,激しい延性破断,炭素繊維の脱落と流動,出口部では多数の長いワイヤー状やリボン状のせり出しが観察され,摩擦熱による大規模な軟化流動が軸受の破損を引き起こすことが示唆された.相手リングにはリボン状の移着が観察された. 4.焼付きによってPEEK樹脂から数十ミクロンを超える捩れたロール状(円柱状)摩耗粒子,薄片状摩耗粒子等が多量に発生した. 5.熱分解分析法でPEEK樹脂摩耗粒子を検出することが可能であった. 6.熱分解分析法及び摩耗粒子分析法は,PEEK樹脂軸受の焼付き過程を検出することが可能であることが示唆された. 7.樹脂軸受は焼付きを起こすことが明確になった.今後,樹脂軸受の焼付きの検出と評価が重要であることが示唆された.
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