粘性液滴に含まれる空気が種となって生成するキャビテーションが、多泡性から単泡性に変化していく過程を実験的に調べることが本研究の目的である。 1)微弱光測光システムの立ち上げ。 1024チャンネルのマルチチャンネル測光システムを購入し、光学系の立ち上げおよび調整とソノルミネッセンス測光試験を行なった。 2)Mie散乱データの解析 グリセリン液滴を用いて生成したマルチバブルクラスターからの光散乱データの解析を、Rayleigh-Plesset方程式の解の重量モデルに基づいて行なった。気泡のサイズと個数を種々変化させて径の2乗の和を散乱強度として実験データと比較した。その結果、実験で得られた散乱波形は膨張サイクルで釣鐘状に丸みを帯びていることがわかった。よって、真の波形が潰れていると判断せざるを得ないという結論に達した。これはクラスターからの散乱光が強すぎることを示唆しており、解決のために光電子増倍管の加速電圧をコンピュータ制御してゲインを自動的に下げる回路と制御プログラムの設計を行なった。 3)モアレパターンの数値シミュレーション 拡散液滴が球対称にガウス関数的に分布する数値モデルを立て、屈折率の差からモアレパターンを作成した。音響的擾乱による干渉がなければ濃度分布の推定ができることを見出した。 4)トレースできる拡散系の探索 グリセリン以外の粘性物質で拡散をトレースできるものがないかを調査した。タンパク質や糖類などの高分子に発光団ないし蛍光団をとりつけた物質を検討した。 5)液滴ではないが粘性の高い系として濃厚塩溶液を試料としてソノルミネッセンス実験を行い、蒸気圧降下の大きいLiBrで数十%の発光強度増加を観測した。
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