粘性液滴に含まれる空気が種となって生成するキャビテーションが、多泡性から単泡性に変化していく過程を実験的に調べることが本研究の目的である。下記のようにまとめることができる。 1)拡散液滴の流体力学的挙動 超音波を照射しない条件下で密度dのKI水溶液の中にグリセリン液滴を滴下してその挙動を調べた。当然グリセリンの密度d_Gがdより大きければ底に沈むと予想されたが、d>d_G-0.01の範囲でそのまま浮き、d>d_G-0.02では一旦底に沈んで再び上昇する挙動が観察された。これはグリセリン/水の界面が静的なものではなく(であればStokesの公式が適用できる)、動的、すなわち拡散および対流によって弱い上向きの力が加わっているものと理解される。 2)Mie散乱データの解析および関連研究 グリセリン液滴を用いて生成したマルチバブルクラスターからの光散乱データの解析を、Rayleigh-Plesset方程式の解の重畳モデルに基づいて行なった。気泡のサイズと個数を種々変化させて径の2乗の和を散乱強度として実験データと比較した。その結果、実験で得られた散乱波形は膨張サイクルで釣鐘状に丸みを帯びていることが分かった。よって、真の波形が潰れていると判断せざるを得ないという結論に達した。 その他、デジタルオシロスコープのパルス波形のふらつきを、真のふらつきとトリガータイミングのゆらぎの協同的確率過程とみなして数値シミュレーションを行ない、Naser and Hayashiの論文にあったパルス列の再解析を行なった。さらにMie光散乱でよく採用されている「散乱強度∝気泡半径の2乗」を数値計算で精査し、散乱角に依存して2乗からずれること、90度であればほぼ2乗とみなせることを明らかにした。 3)硫酸からの音響発光の観測 4)モアレパターンの数値シミュレーション 拡散液滴が球対称にガウス関数的に分布する数値モデルを立て、屈折率の差からモアレパターンを作成した。音響的擾乱による干渉がなければ濃度分布の推定ができることを見出した。
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